ビリケン商会 の 歴史
日本初のアンティークトイを取り扱う専門店で、1976年より東京の南青山にて営業をスタート。1983年よりアンティークトイの売買のみならず、日本で初めての、ソフトビニール製ガレージキット を発案。洋画モンスターや怪獣、ヒーロー等をリアル造型によるソフビキットを40年以上リリースする伝説的カリスマメーカー。
リアルソフビシリーズは、“魅力的な形のモンスターや怪獣たちを、大人の部屋に飾れるアイテムにしたい”という三原宏元氏(ビリケン商会代表)の意向をコンセプトとしており、米国のモンスター、ウルトラ怪獣、ゴジラ、ガメラ、仮面ライダーなどを幅広く展開。
1983年から2025年の42年間、途切れることなく続いたシリーズは、メタルナミュータント、イーマ竜、サイクロプス、金星ガニ、フランケンシュタイン、ドラキュラ、ミイラ男、ゴメス、ゴロー、ナメゴン、ペギラ、M1号、ガラモン、カネゴン、パゴス、ウルトラマン、ベムラー、バルタン星人、アントラー、レッドキング、ジラース、テレスドン、ゴモラ、ウルトラセブン、エレキング、ミクラス、ゴドラ星人、ペガッサ星人、チブル星人、帰ってきたウルトラマン、グドン、ツインテール、ウルトラマンA、キンゴジ、メカニコング、バラゴン、南海の魔神(キングコング)、モスゴジ、バトゴジ、初代ゴジラ、メカ逆ゴジラ、メカゴジラ2、ジェットジャガー、総進撃ゴジラ、サンダ対ガイラ、バラン、ガメラ、ギャオス、仮面ライダー旧1号、蜂女、蜘蛛男、ティム・バートン版のバットマン、ジョカーなどなど…数多くの傑作を生み出した。
いずれの商品もキャラクターを見事に捉えたリアルな造型が圧巻で、怪獣を商品化するにあたっての「正解」ともいえる再現度は、怪獣ガレージキット、怪獣ソフビ、怪獣フィギュアに多大な影響を与えている。
また海外のモンスターを手掛けていることから、海外にも熱狂的なファンが多く、ビリケン商会の名前は、世界的なブランドとして認知されている。海外ではビリケン商会のソフビを飾るためのジオラマベースが、独自にガレージキット化されるほど、その人気は高い。
■ 代表 三原宏元氏 インタビュー
ビリケン商会のリアルソフビたちはどのように生まれたのか。そして、その誕生の裏にあった作り手たちの想いとは。ビリケン商会代表の三原宏元氏にお話を聞いた。

《 インタビュー動画 公開中 》
━━三原さんはどういった経緯でビリケン商会を作られたんですか。
三原 僕自身が古いオモチャを集めてたんだけど、ある雑誌に僕と同じように古いオモチャを集めてるコレクターが載ってて、この人いいもの持ってるなぁって思ってたんだよ。そしたら僕の後輩がそのコレクターの人とオモチャ屋で知り合ってさ。それで連絡取ったら浅草橋の問屋行くからって言われて、一緒に行ったんだよね。それから付き合いが始まってね。その人はイラストレーターだったんだけど、仲間と広告代理店みたいなことをやっててね。その広告代理店の一部門としてビリケン商会っていうのを作ったんだ。それでそのイラストレーターの人と、僕が集めてたオモチャを並べて、青山の骨董通りで古いオモチャの専門店をはじめたの。1976年5月にね。
━━最初から今のお店だったんですか。
三原 いや最初の店は3年ぐらいで移動しなくちゃいけなくなって、一回千駄ヶ谷に移って、そこからまた青山に戻って、それからずっとここだね。それが80年ぐらいだったかな。その頃にプラモデルを集めてる人が出てきて、お客さんから古いプラモデルが欲しいって言われるようになってね。それで模型雑誌の『ホビージャパン』に古いプラモ買えますっていう広告を出したんだ。当時はそんな店なかったから、これは面白いと思ってね。それからガンダムのプラモの作例をやってた小田(雅弘) さんとか、そういう人たちが来始めたのかな。
三原 そうだね。西村さんとかソフビコレクターの倉治(隆)さんは、もうちょっと前から来てたかな。それで小田さんが「関西で怪獣のガレージキットが出たんですよ」って教えてくれたんだよね。面白そうだから試しに買ってみたんだけど、それはちょっと小さいキットでピンとこなかったんだよね。そしたらイノウエアーツってところがモスゴジを作って。あれは50センチぐらいあったかな。あれを見て、これは面白いなと思ってね。ガレージキットを自分でもやってみたくなったんだよね。
━━イノウエアーツの井上雅夫さんが作られた通称バンザイモスゴジという伝説のガレージキットですね。あのキットの大きさと迫力で、ガレージキットに興味持った方は多いみたいですね。
三原 そうそう、やりたくなった。ただ、やってみたいといっても、周りに作る人間なんか誰もいないから、その頃ウチに出入りしてたイラストレーターとか、そういう連中に何か作ってみてよって頼んでね。
━━最初は『宇宙水爆戦(1955年)』のメタルナミュータントですね。
三原 当時朝日ソノラマから出てた『宇宙船』で、編集長の聖(咲奇)さんがメタルナミュータントとかサイクロプスとかイーマ竜を紹介してたんだよね。ああいうモンスターがカッコイイな、と思ってね。それでメタルナっていうお題をイラストレーターのみんなに出したんだよ。その中にハマ(ハヤオ)もいたの。
━━ビリケン商会のソフビを語る上では欠かせない、原型師のハマさんの登場ですね。
三原 ハマは古いブリキのおもちゃが欲しくてウチに来てたんだよね。最初に来た時は美大受験の浪人生だったけど、1年後にまた来たらマネキン屋でバイトしてるって言ってさ。自分で作った小さなオリジナルのマネキン人形とかハリウッド女優のレリーフみたいなのを作ってきて、それをウチの店に置いたりしてた。それでメタルナっていうテーマを与えたら、いきなりキットの状態になってるメタルナを作ってきたんだよ。これはすごかった。
━━そのハマさんの原型を元に、最初はキャストで出されたんですよね。
三原 そうだね。あのキャスト製のやつが6000円だった。それで、やっぱりちょっと高いと思って、安くできないかなと考えたんだよね。そしたらウチに来てたモデラーのヒゲのプラモ怪人・小沢勝三が「ソフビは?」って言ったんだよね。それがソフビっていうものを意識した最初。でも、ソフビなんてどうやって作るんだ…って感じでね。
━━さっきお話に出てきた井上さんのモスゴジはポリエステル製でしたけど、初期は素材の試行錯誤もありますね。
三原 古いオモチャの方でオモチャの問屋さんとか、そっち系の知り合いはいたんで、あるオモチャメーカーの跡取り息子に話したら、ソフビならウチで出来るって言ってくれてね。それでメタルナのキャストキットを渡したら、ソフビにしてくれた。ただ、向こうは抜けるようにいじくるから、こっちの思った形ではなくてね。それでやっぱり自分で作らなきゃダメだって思って、ソフビの型屋さんを探して、上條金属(現・モールドメーカー 株式会社カミジョー)っていうところを紹介してもらった。当時は古い木造の家の縁側が事務所みたいになっててさ、そこにいつも和服を着ているようなおじいさんが出てきてね。それが今の先々代の社長さんだったんだけど、当時はまだ僕も20代だったからさ、とにかくこういうことがやりたいんですって必死に説明したら「そんなことをやるのは誰もいない」って面白がってくれてね。
━━それでソフビの金型を作ってもらうところが出来たんですね。
三原 そこから今度は金型にソフビを流して抜いてもらう抜き屋さんを紹介してもらったんだけど、ウチのソフビは量産用の増し型なんか作らなかったから型が1セットしかなくて、その1セットで抜くから1日に成形できる数なんか知れてるんだよね。だから抜き屋さんとしては効率が良くなくてさ。最初の内は、1回やると「もうこれっきりにしてくれ」ってみんな断われてた。それで方々で嫌がられている内に、何箇所か目で止まったところがあったんだよ。そこで知り合ったう抜き屋さんが、いまだにやってくれてる。
━━やはりあのリアル造型を商品化するためには相当のご苦労があったんですね。ソフビのメタルナの評判はどうだったんですか。
三原 結構面白がられてね。他のお店でも置きたいから卸してくれって言われたよ。ただ、今だったら考えられないけど、材料費とか抜き代に少し乗せればいいや、ぐらいに考えてたからソフビの販売価格の2000円は、ほとんどウチの儲けなしだったんだよね。それで卸す時には、さらに定価より安くしなくちゃいけないの?って、驚いちゃってさ(笑)。海洋堂の宮脇専務にも言われてるけど、ビリケンが最初にあんな値段設定されたからすごいやりづらかったって。今は自分でもよくわかる。あれはありえない。
━━採算度外視だったんですね…。でもファンからするとあの値段が嬉しかったですね。あの価格であの大きさで、しかも造型もすごいって。マニアの家にいくと必ずありましたからねビリケンのソフビ。
三原 ああ、当時ファンになってくれた人たちが多かったんだなっていうのは、今も感じるね。家庭を持たれたりとか、生活が変わって一旦趣味の世界から離れたんだけど、40代50代になって落ち着いてから、また趣味の世界に戻ってくるのってあるじゃない。そんな感じで「またビリケン集めてます」って言ってくれる人も結構いて。ありがたいです。
━━メタルナの次が『地球へ2千万マイル(1957)』のイーマ竜、次が『シンドバッド7回目の航海(1958)』のサイクロプスで、この辺は完全に『宇宙船』の影響ですかね。
三原 そうだね。ウルトラとかゴジラの怪獣をずっとやってるから怪獣ファンだと思われてるかもしれないんだけど、僕は別に怪獣が好きで、これやったわけじゃなくて、形のいいものとか面白いものに興味を持ってやってたんだよね。井上のモスゴジを見た時も、とにかくカッコイイな、と思ったのが全て。だからビリケンのソフビはオブジェとしてカッコイイと思うものを今も作ってるつもりでいる。大人の部屋に置いてあって決まるものを作ってる感じかな。あとソフビだから遊べるように、というのもあって、キンゴジなんかは、かなり可動するように作ったね。
━━イーマ竜、サイクロプス、キンゴジの口が開くのは表情が出て良いですよね。それにしてもモンスターや怪獣のファンではないのに、あそこまで形にこだわるのは脱帽です。
三原 ハマもどっちかというと怪獣ファンではなくて、いい形のものを作りたい、というのが大きいね。ハマはビリケンっていうブランドにすごいプレッシャーを感じていて、ガラモンとかミクラスは何年も原型にかかってる。まあ待ってるこっちも大変だし、原型代とか考えたら利益なんか出てないよ(笑)。あとハマはへそ曲がりだから。よくある決めのポーズのものを作りたがらないんだよ。ウチのソフビの撮影に立ち会ったりすると、なかなか決まらなくて困ることもあった。ただ面白いのは、決めのポーズ的な撮影には向かないんだけど、手に持った時にどこから見てもちゃんとそれになってるんだよね。ハマの造型は。
━━ああ、逆に決めポーズ的な造型だと、決めの方向だけで成立してて、逆から見ると似てないみたいなこともありますね。
三原 そう。ハマのはそれがないんだよ。その辺の立体としての持った時の面白さ、モノとしての良さにはずっとこだわってるよね。
━━形へのこだわりと大人が飾れる品格みたいなものが、ビリケン商会のソフビには宿っていると感じます。
三原 僕はソフビ作りを遊びだとは思わないけど、すごい儲けようっていう気持ちは別になかったし、面白いもの作れるんだったらいいやって感じでやってたね。
━━ビリケン商会のソフビで唯一のハードルは塗装ですかね。ビリケン商会さんでも塗装済みキットを一時期やられてましたが。
三原 もう塗装できるおじさんがいなくなってしまってね。怪獣の塗装なんて一回塗って剥いでみたりとか汚したりとかするからさ。そういう塗装を量産品の塗装の値段でやってくれてた職人さんが、あの頃はいたんだけどね…。そんなわけでウチで完成品にするのはもう無理だから、トイバースという新しい会社と組んで、「極上彩色完成版」にすることになったんだよ。
━━では最後に「極上彩色完成版」についての想いをお願いいたします。
三原 塗装って難しいからね。塗装失敗すると全然違う顔になってくる。だから「極上彩色完成版」の塗装についてはビリケン商会としてもちょっとうるさいこと言わしてもらいたい。もう42年ぐらいやってて、ビリケンのイメージもあるから。ビリケンが完成品になるんだよってなると、やっぱりそれなりのもの、お客さんたちが納得いくようなものを届けないとね。まあ、そこはビリケン商会の目でチェックして、納得いくものになると思います。楽しみにして下さい。
━━今日はありがとうございました。
ビリケン商会 プレミアム・コンプリートシリーズ 極上彩色完成版
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